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『蒲田行進曲』

更新日:2023年5月15日

写真は、先日読み終えた『つかこうへい正伝』。


私はつかさんの『蒲田行進曲』の稽古をして「役者になる覚悟を決めた」‥‥

いや、そんなことではなく、

「人として自信がもてた」

いずれにせよ『蒲田行進曲』は、

私の人生に大きな影響を与えてくれた作品です。





つかさんの脚本は人の裏の裏の裏の‥‥とにかく心の奥底をえぐる。

なので、日常「優しい」とか「性格良いね」なんて言葉はなんの役にも立たない。

で、いうと「私は性格は悪い、人に優しくする気なんて毛頭ない」。



なんだけど。

20数年前、師匠に怒鳴られまくり、汗だくになり、喉がらがらになりながら、

稽古でヤスを演じた時

「もしかしたら私にも愛情はある、いやなんか、少しはある気がする‥‥」

そう思えました。



美しいだけではない、醜い感情を含めた日常を越えた感情を探るために、

ありったけの声量と身体を使い稽古した時、見えるものがありました。

きっとそれは、芝居も人生も同じ。

全てをかなぐり捨てて臨んだ時に見えるものがある。


今の若い役者や、世間の流れにこの芝居観、考え方が万人に当てはまるか?

と聞かれたら微妙かもしれませんが、

私は大好きだし、役者を志すならば1度は通り抜ける、体感すべき作品だと思ってます。




で、先日の稽古場。

写真でもおわかりになりますように、稽古場は荒れます(笑)



普段は「繊細に芝居しろよ」「日常そんなことしねぇだろ」なんて言ってますが『蒲田行進曲』の稽古が始まった途端、

「もっと声張れ!」「もっと動け!」

はたまた、「そこ、転がっちゃえよ」

なんて、意味不明な駄目だしがあったり‥‥

そこは修羅場と化します。




今回の稽古で、ホンの少し覚醒した役者もいた気がします。


上にも書いたように、この芝居が全てじゃないけど

この芝居を経験したあと、見える景色が変わってくれると嬉しいです。




それは芝居だけでなく、日常生活においても。




前置きが長くなりましたが、

こちらの本も『蒲田行進曲』同様、

つかこうへいさんの下に集まる役者、関係者の方の離合集散、毀誉褒貶……

その内容は舞台以上に劇的であり、キレイごとで終わる本ではありませんでした。


まぁ‥‥‥全てにおいて「キレイごとで」‥‥っていうか、

穏便に普通に終わらせられることに越したことはないんですが‥‥



私は当然、つかさんの様な著名で才能のある人間ではないですが

この芸能界でフリーと名乗り、新たなことを試みようとすれば、

若干、痛い思いはしますね。

人に嫌われるのは本当にイヤですが(笑)

日常から劇的に生きるためにも、良い役者になるためにも……



そして、たった1度の人生を全うするためにも、

若干の非難や、哀しみには打ち克とうと思ってます。



穿った解釈かもしれませんが、そんな思いに勇気をくれた


そして「役者は一生懸けていい」


そんなことを、改めて思わせてくれた一冊でした。


水野智則

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