写真は、先日読み終えた『つかこうへい正伝』。
私はつかさんの『蒲田行進曲』の稽古をして「役者になる覚悟を決めた」‥‥
いや、そんなことではなく、
「人として自信がもてた」
いずれにせよ『蒲田行進曲』は、
私の人生に大きな影響を与えてくれた作品です。
つかさんの脚本は人の裏の裏の裏の‥‥とにかく心の奥底をえぐる。
なので、日常「優しい」とか「性格良いね」なんて言葉はなんの役にも立たない。
で、いうと「私は性格は悪い、人に優しくする気なんて毛頭ない」。
なんだけど。
20数年前、師匠に怒鳴られまくり、汗だくになり、喉がらがらになりながら、
稽古でヤスを演じた時
「もしかしたら私にも愛情はある、いやなんか、少しはある気がする‥‥」
そう思えました。
美しいだけではない、醜い感情を含めた日常を越えた感情を探るために、
ありったけの声量と身体を使い稽古した時、見えるものがありました。
きっとそれは、芝居も人生も同じ。
全てをかなぐり捨てて臨んだ時に見えるものがある。
今の若い役者や、世間の流れにこの芝居観、考え方が万人に当てはまるか?
と聞かれたら微妙かもしれませんが、
私は大好きだし、役者を志すならば1度は通り抜ける、体感すべき作品だと思ってます。
で、先日の稽古場。
写真でもおわかりになりますように、稽古場は荒れます(笑)
普段は「繊細に芝居しろよ」「日常そんなことしねぇだろ」なんて言ってますが『蒲田行進曲』の稽古が始まった途端、
「もっと声張れ!」「もっと動け!」
はたまた、「そこ、転がっちゃえよ」
なんて、意味不明な駄目だしがあったり‥‥
そこは修羅場と化します。
今回の稽古で、ホンの少し覚醒した役者もいた気がします。
上にも書いたように、この芝居が全てじゃないけど
この芝居を経験したあと、見える景色が変わってくれると嬉しいです。
それは芝居だけでなく、日常生活においても。
前置きが長くなりましたが、
こちらの本も『蒲田行進曲』同様、
つかこうへいさんの下に集まる役者、関係者の方の離合集散、毀誉褒貶……
その内容は舞台以上に劇的であり、キレイごとで終わる本ではありませんでした。
まぁ‥‥‥全てにおいて「キレイごとで」‥‥っていうか、
穏便に普通に終わらせられることに越したことはないんですが‥‥
私は当然、つかさんの様な著名で才能のある人間ではないですが
この芸能界でフリーと名乗り、新たなことを試みようとすれば、
若干、痛い思いはしますね。
人に嫌われるのは本当にイヤですが(笑)
日常から劇的に生きるためにも、良い役者になるためにも……
そして、たった1度の人生を全うするためにも、
若干の非難や、哀しみには打ち克とうと思ってます。
穿った解釈かもしれませんが、そんな思いに勇気をくれた
そして「役者は一生懸けていい」
そんなことを、改めて思わせてくれた一冊でした。
水野智則
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